煉獄日記

目指せ天国。

論文・ノート管理法

珍しく(ごく一部の人にとっては)実用的(かもしれない)内容を書きます。私がどうやって読んだ論文とそのノートを管理しているかという話。
一応誰が読むかわからないので書いておくと、私は人文系の大学院生で、学期中は平均して週に本2~3冊、ジャーナル論文3本程読む生活をしています。全体的に内容がAppleのまわしものっていうか、iPadありきな話をするので、あくまでも2020年12月時点でのひとつの参考程度にどうぞ。

 

半年ほど前まではずっと、かなりアナログな方法で管理していました。具体的には、
1. 見つけた論文はすべて印刷して「未読」の山に積んでおく
2. 紙で読んでコメント、ハイライト等もすべて書き込み
3. コメントと重要な引用をWordでまとめる
4. 上の作業が終わった論文は「既読」の山に積んでおく
と、こんな感じで。
正直、このやり方でずっと困ってなかったんですよね。修論もこのやり方で書いたし、留学してからもほぼ同じやり方を続けてました。

でも留学して1年が経った頃に、⑴部屋が狭いから既読の論文が邪魔、⑵学期末には数本のペーパーを同時進行で書くため参照したい論文が行方不明になりがち(=探す時間が無駄)、⑶複数のペーパーに使った論文のファイリングに困るし後から探しにくい、などの問題が発生していることに気づき、一念発起して夏休み中に新しい管理体制を構築しました。

その時に最低条件として考えたことが、
1. 論文を読んでいる最中にキーボードは打ちたくない
2. 既読の論文とそのノートを検索可能な形で保管したい
という2点。1は何があっても譲れなくて、それはつまり紙とペンに近い使い勝手じゃないとだめということ。なんなら紙にマーカーで線を引くみたいにハイライトもしたいし、余白に書きこみもしたい。2に関しては、本文検索までできたら理想だけど、最低限タイトルと著者がわかればいいかな、という程度。でも1と2を両立するのはなかなか難しいしどうしよう……というのが悩みでした。

 

で、まあ前置きが長くなったけど、ここからが今実際にやっている管理法です。

まず用意したものは、
1. PC:別に普通のやつ、っていうか元々使ってたやつ。
2. iPad:私のは第7世代。AirとかProじゃない普通のiPad。画面10.2インチ(たぶん)。Apple Pencilが使えて画面が小さすぎなければそれ程高い機能は求めなかった。
3. Apple Pencil:第1世代。
4. Google Drive:容量が大きいから選んだけど別に他のクラウドでもいいと思う。
5. Evernote:私はPC、iPadiPhoneの3台で使いたいから有料版にしているけど、無料版でも十分な気がする。
6. GoodNotes 5:iPadの有料アプリ。確か1000円くらい。
わざわざiPadApple Pencil、Evernote有料版、GoodNotes 5を購入したのでまあまあな出費で「なんとしてもこれでどうにかするぞ」という気持ちも高まる。

 iPadを開いて最初に出る画面はこんな感じにしてある。下に並んでるやつの左から2番目がGoodNotes 5、3番目がGoogle Drive、4番目がEvernote。時計マークのやつは勉強時間の管理に使ってるタイマー。

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次に実際の手順。

1. 見つけた論文PDFをGoogle Driveに入れる
私は基本的にPCで論文検索をするので、見つけたらDLしてGoogle Driveに入れる。プロジェクトごとにフォルダ分けをして、ファイル名は「出版年_著者苗字_タイトル(副題は長ければ省略)」といった感じ。
出版年を最初にしているのは私が論文を読むときに「いつ出版されたか」を失念したまま読みがちだから、それを意識にのぼらせるためにそうしているだけ。普通に著者苗字を冒頭に持ってきた方が探しやすいんじゃないかと思うことも多々ある。

2. 読む論文をGoodNotes 5に読み込む
GoodNotesはノートテーキングアプリで、PDFを読み込むとその書類がそのままノートの紙のような感じになる。つまり印刷した時と同じような感覚で書きこみ等ができる。そして、PDFに書きこむだけでなく、白紙のノートページを追加して普通の紙のノートのような感じで使うことも可能。
画像はGoodNotesにPDFを読み込んだところ。Google Driveのファイル名がとりあえずそのままノートの名前になる。(ノート名は後から編集も可能)
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3. 論文を読む、ノートをとる
Apple Pencil×GoodNotesのおかげで普通の紙とペンみたいな感じでハイライトしたりコメント書きこんだりできる。私の場合は論文PDFの前に数枚白紙ページを足して、そこに論文の要旨を書いたり詳しいノートをとるようにしてる。スプリットビューとかいって画面の左右に違うアプリ(例:左側にKindle、右側にGoodNotes)やGoodNotes内の別のページ(例:左側に論文の本文、右側にノートページ)の表示ができるので、直接書きこんだメモを参照しながらノートにまとめることができる。読みながら並行してノートをとることもできるけど、iPadの画面サイズだとちょっと小さくてやりづらい感じがする。元のPDF次第ではあるけど、本文をノートにコピペできる場合も多い。
スプリットビューの例。同じファイルの違うページを左右に表示している。追加できる白紙ノートはサイズ・罫線ともに何種類かあり。画像右側はコーネル式のもの。

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 こっちは左側にKindle、右側にGoodNotesを出した場合の画像。この状態でKindleの本文をコピー→GoodNotesにペーストも可能です。

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4. Evernoteにエクスポート
元のPDFにノートページを追加する形にすれば、読書ノートとハイライト・コメントの入った本文が1つのファイルにまとまった状態になっているので、それをEvernoteにエクスポートして完了。Google Driveと同じようにEvernoteもプロジェクトごとのフォルダ(ノートブックっていうんだっけか)を作って管理している。この時もファイル名は「出版年_著者苗字_論文名」のまま。

 

論文入手から保管までの手順はこんな感じ。半年くらいこれでやってみたけど、今のところ特に困っていることはない。あえて言うならEvernoteの検索機能がなんとなく信用ならないことだけど、これは私の使い方の問題なんだろうか。
ちなみにGoodNotesは手書き文字認識機能もあるので、GoodNotes内やEvernoteにエクスポートした後もある程度は手書き文字を検索で拾うことが可能。でもこの機能は私は今のところほとんど使っていないので使い勝手についてはなんとも言えない。

ちなみに紙の本を読むときは、極力引用を減らしながらやっぱりGoodNotesで同様のノートをとっている。どうしても引用として長めの文章をノートに残しておきたいときは、それにはやっぱりキーボードの方が作業が早いので、後からPCでEvernoteのファイルに書き足したりしてるかな。

 

ついでなので論文を読む手順についても書いておこうかな。こっちはまだすごーく試行錯誤状態だけど。あくまでも上に書いた管理法の中での読み方の話です。

1. 冒頭にまとめページを作る
GoodNotesファイルの冒頭に白紙ページ(私はここには方眼を使ってる)を付け足し、一番上に「日付 著者苗字、タイトル(出版年)」を書いておく。この時点で著者や出版に関する情報があれば一緒にメモしておく。

2. 論文を読む目的を考え、問をたてる。
他の論文からの芋づる式で知った場合は、何に興味を持ってその論文を手に取ったか。アブストラクトを読んでみて、どこをより詳しく知りたいか。アブストラクトがついてなければタイトルとイントロの流し読みで同様に。「Aの人種観についてこの論はどう結論付けているか」とか「この論の主張はBの論と同じに見えるが、どこが主要な違いか」といった論旨関連のものだったり、「19××年の移民法はどのような内容でアジアのどの国が対象だったか」といった事実を知るための問だったり、問の内容は論文を読む目的に応じて色々。まだ手探り状態のプロジェクト初期や追い込まれて時間がないときはこの作業は飛ばされることもしばしば。。

3. イントロ、コンクルージョンを読んで論旨を把握
イントロを読むときは論旨(アーギュメント)、メソッド・アプローチ、先行研究へのコントリビューション/インターベンションをおさえるように気をつける。イントロに関してだけは、読みながら並行してメモをとることも多い。なぜなら重要なポイントが詰まってて文章への書きこみを後からノートに写し直すのが面倒だから。

4. 本文を読む
本文っていうか、なんていうの、論文のBody部分のことです。本文を読むときは私はノートはとらず、文章へのハイライトと簡単な余白へのメモだけで先に進むようにしている。2で立てた問の答えになるような部分はある程度丁寧に読んで印もつけて、他はできるだけスピーディーに読みたい、と思ってはいる、けど、まあじっくり読んじゃうやつは読んじゃうよね。

5. ノートをとる
日本語論文の場合は論文を全部読み終わってから、英語論文の場合は節ごとにノートをまとめる時間をとることが多い。とにかく4の段階で簡易的なメモしかとってないから、あまり時間が経つと「ここ何でハイライトした?」とか「このメモは何が言いたいんだ」となりがちなためです。
GoodNotesファイルの2ページ目にまた白紙ページ(私はコーネルを使うことが多い)を足して、ページ数、引用、まとめ、コメント、キーワード等を書く。私は自分の意見・コメントは赤、著者の意見・論文からの引用は黒で分けるようにしている。
スプリットビューは画像のように1:2の割合で表示することも可能。ノート部分が大きくて字が書きやすいから、ノートをまとめる段階では私はこの状態で使うことが多い。

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6. 冒頭のページに論文の要旨と問の答え、自分のコメントをメモ
本文をすべて読んでノートも取り終わったら、問を書いた1ページ目に戻って、論文の要旨、問への答え、自分の主要なコメントをまとめる。5でとるようなノートだけでも十分なことも多いと思うけど、読む量が増えて「どの論文がなんの話だったか思い出せない」となってきてからは、1ページ目に論文の要旨+自分の主要な意見が書いてあると見返しやすくて便利だな、と思ってこうしている。
今学期の授業で本のConceptual Mapを書くという課題が出て、そこではTopic、Intervention、Claims & Evidence、Scholarly Dialogueを1ページにまとめてたんだけど、本くらい長いものを読んだときはそういう形のまとめの方が便利かもしれない。私は他の授業用に、それをアレンジしたTopic、Intervention & Scholarly Dialogue、Methods、Argument、Main Claims、Keywordsから成るConceptual Mapを作って授業準備に使ったりしてた。
画像はジャーナル論文を読むときの1ページ目の例。例っていうか、枠組みをざっくり書いただけだけど……。

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まあ、こんなところかな?
ノートの取り方はまだいろいろ試行錯誤中だけど、管理法に関してはしばらくこのやり方を続けるつもり。ただクラウド関係はいつ条件が変わるかわからないし、iPadやPCが壊れたときにどれくらいマズイことになるかという辺りはあんまりちゃんと考えてないので、これから大変なことが起こることもあるかもしれないし、ないかもしれない。

っていうかうちの貧弱PCはzoom授業のせいで弱りまくりです。困っちゃうわー。