煉獄日記

目指せ天国。

オンライン授業

今日、初めてのオンライン授業を経験した。結果的に言うと、とてもいい授業だった。小さなトラブルはあったものの、全員が「良い授業にしよう」と前向きに取り組んでいて、それが最終的な皆の充実感につながっていた気がする。
一応書いておくと、私は今ハワイの大学院で人文系の学部に所属し勉強している。こちらにやってきたのは約半年前。まだ英語がおぼつかない部分もありつつ、とっている3つの授業に必死についていっているような状態だ。今日のオンライン授業はそのうちのひとつ、英語の研究書が毎週1冊課題として出され、それについてディスカッションをするという授業だ。

 

授業の流れ

授業の開始は12時半から。今回使ったのはGoogle Hangouts Meet。
12時20分、先生から事前に送られてきていたURLをクリックしてアクセス。その時点で誰がオンラインかを見ることができるのだが、なかなか誰もオンラインにならない。とりあえず先生が来てから入ろうと思い、待機。
12時27分、先生がようやくオンラインになる。さっそく私もJoinのボタンをクリック。今回の授業の先生は日本人で、私のこともよく気にかけてくださる先生なので、最近の近況などをお話する。「トイレットペーパーが足りません」とか。
12時30分を過ぎて、その5分くらいかけてようやくクラスメイトたちが集まってくる。みんなアメリカン時間というかハワイアン時間というか、5分前行動って言葉は習わなかったかい?まあいいや、そんなことは誰も気にしない。

参加者は先生を含めて6名。うち一人は、パソコンが故障中だということで、音声だけでの通話による参加だった。全員の音声と、彼女以外のクラスメイトの映像に問題ないことを、手を振ってみたり「Hi~」とあいさつしたりして確認。
「私もオンライン授業は初めてだけど、どうにかやってみましょう」というようなことを先生が言って、いつも通りに授業が開始。
この授業では先生の話す時間が3割、残り7割は学生たちがディスカッションをするような形で進む。先生の話を聞いている分には全く問題なし。多少英語の苦手な私でもちゃんと聞き取れるくらい音声はクリアだった。Google Hangouts Meetは今参加者のうち誰が話しているかを認識して、その人を大きなスクリーンに映し出す機能がある。先生が解説をしている間は画面の左半分というか左8割くらいに先生の顔が映り、他の学生の顔は右側の小窓に映される。学生が何か発言をすれば、その画面が切り替わる。

途中で皆が書いてきた課題本のサマリーを批評し合おうということになった。各自のサマリーは事前にGoogle Driveへアップしてあったので、先生が Presenting とかいう機能を使って画面上にシェア。さっきまで発言者の顔が大きく映っていた部分が、先生のパソコン画面の共有になる。

普段は3時まである授業だけど、今回は2時半過ぎに「もういいか」ということになり解散。約2時間の授業、とても疲れたけど意外と楽しかった。

 

デメリット

学生同士のディスカッションになると、やはりオンライン独特の難しさがあった。特に話し始める瞬間がかぶってしまうと、その両方の音声が数秒間流れることになり、何を言っているか(少なくとも私は)全然聞き取れない。
とはいえ、そういうことは普段の授業でも起こる事なので、互いに譲り合ったり先生が指名をすることで解決。話し終わったら、最初に声がかぶった人に「なんて言おうとしたの?」と話を振ったりしてディスカッションは進行した。
電話で参加しているクラスメイトはなかなか発言がしづらそうだった。みんなの顔が見えないのだから当然だろう。どうしてもしゃべりたいことがある人は、前の人がしゃべってる間に挙手をしたりするけど、そういうのが見えないので発言するタイミングに迷っていることも何度かあったように見えた、というか聞こえた。
しかしそれも先生の進行がとても良く、みんなの発言が途切れた瞬間などに「○○(電話参加の学生)はどう思う?」と振ることでバランスを保っていた。しかしこういう先生の力量ありきな部分は、やはりオンライン授業のデメリットと言えるだろう。

留学生で英語のまだまだ未熟な私は普段の授業でもなかなか発言をするのが難しい。そのためオンライン授業になったら何も言えないんじゃないかと多少怯えていた。しかし、オンラインだからこそ皆が他の人の話し出すタイミングを良く見ていて、そのすき間を狙って話し出すことができてよかった。
なんでだかよくわからないけど、むしろいつもより発言できた気さえする。ただ、英語(というか外国語)での発言というのは発言の終わらせ時が難しく、いつもなら先生へのアイコンタクトと謎のフェードアウトで済ましているところを、 "That's what I thought." とか "That's my point." という言い切りの形にする努力はした。努力は、した。努力賞ですね。

あと画面を共有(Presenting)する形でのドキュメントのシェアはあまりお勧めしない。Zoomなら少し勝手が違うらしいけど。Google Hangouts Meetの場合、パソコン画面全体が映し出されるため、文字が小さくて読みにくかった。そう感じたのは私だけかもしれないが、ドキュメントをシェアするなら各々のパソコンでファイルを開いて見たほうがよさそうだ。ちなみに私は紙媒体とスクリーンとでは英語の読む力が倍くらい変わる、つまり紙媒体の方がよっぽどよく理解して速く読むことができるので、事前にシェアされた文書は来週以降は授業前にプリントアウトしておこうと思う。

あと、とにかく疲れた。目もしぱしぱする。

 

メリット

良かったことは……特にない。
もちろんこういう状況下で限りなく「いつも通り」に近い授業ができたということは良かったと思う。でもやはり、大学院の授業というのは、人と人が顔を見合わせて互いの息遣いを感じながら議論をすることに意味があるのであって、その再現度という点ではやっぱりオンライン授業はまだまだだ。
まあ、あえて言うなら家から出なくていいことか?どうしても教室へ行くことが難しい、という人にとっては、選択肢のひとつとしてはありかもしれないね。

 

トラブル

途中であったマイナートラブルは、本当にマイナーなもの。
クラスメイトの一人は家族で3人が同時にオンライン授業・会議をしているため接続が不安定だったようで、途中で落ちてしまったり、画面がかたまってログインしなおしたりしていた。最終的には「充電がない~」と言って最後の15分くらいは参加せずにいなくなってしまった。
他の学生のiPhoneが鳴り出したりもした。彼女はiPhoneで授業に参加していたようで、電話をどうすればいいのか困りながら「ごめん~」って感じになっていた。でもすぐに電話は切って、授業再開。ちなみに私はパソコンで参加していたけど、iPhoneはおやすみモードに設定しておいたので、着信や通知には煩わされることなく授業に集中できた。
彼女は接続環境のせい、もしくはiPhoneのせいか、画像も音声も荒くなったりクリアになったりで、特に音声が荒い時はリスニングに苦労した。それにもしあれが自分だったらと思うと、あの乱れた画面と音声を見られたり聞かれたりするのは嫌だなあ。
あと一番困ったのが、誰かの家の周りがうるさかったこと。誰だったのかはよくわからなかったし、時間によって違う人の家の周りがうるさかったのかもしれないけど、謎のかたかた音が鳴っていたり、トラックや救急車が通り過ぎたり、とにかく騒がしかった。あまりにも外の音がうるさければ議論がほんの一時中断することはあったけど、おそらくネイティブスピーカーには特に気になるほどの音でもないらしく、割とそのまま授業はすすんだ。まあこれは、ハワイの人は家にいるとき窓開けがちなので、単にそのせいかもしれない。

 

まとめ

コロナウイルス感染拡大による今みたいな緊急時はともかく、やはり大学というのは人が集まる場としての意味が大きいのであって、この状況を見た大学経営者などが「授業はオンラインでいいのでは?」などと愚かな考えをおこして人件費や施設費を削ったりすることがないよう願っている。大学も、大学院も、やはり人の顔を直に見てなんぼである。物理的な空間とそこで生まれる人との繋がりというのは、教育において「お偉いさん」たちが思っている以上に重要だ。

それでもまあ、緊急時の対応としてはオンライン授業も有効な手段だということはわかった。安定したインターネット環境(特にWi-Fi)、パソコン(iPhoneも一応可)、みんなのやる気があれば、それなりな教育の質は保てるはずだ。日本の大学(特に学部生)のことを考えると、それら3つを揃えることは至難の業に思えるけれど、こういう時だからこそ大学で学ぶ意味を考えてみるのもいいかもしれない。