煉獄日記

目指せ天国。

見えないものに目を向けて、

見えないものに目を向けている。なにも、生活の中にひそむ小さな幸せを見つけてほっこりしたりしているわけではない。仕事の都合上、電気について頭を悩ませているだけだ。

電流や回路の話は何度勉強しても本当に頭に入ってこない。その場しのぎを繰り返して早数十年という情けない状況。物理分野は苦手。

でも、物理の研究者たちが見ている世界には興味がある。文学畑にどっぷりはまっていると、様々な事象が言葉で構成されていく姿が日常生活でも浮かび上がってくるようになる。論理とレトリックの動きが昔とは違う解像度で見えてくる。しかしそれは観念の操作であって、決して触ったり握ったりできるものではない。

で、思うのだ。物理学もそれに似ているなあ、と。電流やエネルギーは、触ればビリビリしたり熱くなったりするぶん、レトリックよりは物質的かもしれない。しかしその目に見えないものたちがどう動いているのかを知るためには、目に見えない世界に仮説を持ち込んで、思考を中心に確認をしていくしかない。見えないものを見えるようにして、物質的な流れとして世界を再構成していく物理学。その研究者たちには世界がどのように見えているのだろう。

私がしっかりと物理を理解する日はもうしばらくやって来ることがなさそうだけど、というか一生やってこないだろうけれど、彼らが見ている世界の話はいつか聞いてみたい。あ、でもそうしたら、「言葉で説明して」という要求は彼らにとって外国語を強いるようなものなのか。物理の世界は、遠そうだ。