初めて訪れた小さな書店や古本屋では、なるべく何かしら買うようにしている。
店に足を踏み入れ、本棚の間をじっくりめぐり、目に留まった本を手にとって、店主のいるレジへ持っていく。その一連の動作を楽しんで、やっと古本屋を味わったという気持ちになれる。
あと、本を買った時の店主の反応を見るのも好き。無表情のままのおじさんもいれば、口もとだけにふっと笑みを浮かべるおじさんもいる。さっと包んで「ほら帰れ」みたいな態度のおじさんもいるし、丁寧に袋に入れてにっこりと「ありがとうございます」と言ってくれるおじさんもいる。(なぜ古本屋の店主はおじさんが多いのか)
どのような態度が好きとか嫌いという話ではない。その店主の反応を含めて、「ああ、こういう店なのか」と感じることが楽しいのだ。どんなぶっきらぼうな店主でも、たいていその店によく似合っているから面白い。
今日は神楽坂の路地にある、クラシコ書店という古本屋に行ってきた。
前にも店の前まで来たことはあったのだが、そのときは運悪く店が閉まっていたので、お店の中を見たのは今日が初めて。小さな扉と照明をおとした店内はちょっと入るのに緊張した。でも、そのちょっとした緊張感が、店内の本の匂いをかいでふっとやわらぐ瞬間が好き。
本だけでなく、きれいな文具も取り揃えてある、見ているだけで幸せになれるお店だった。本に関しては、神楽坂にちなんだ雑誌のバックナンバーがあったり、文化人類学の古典的研究書があったり、「暮らし」がテーマになるような本が多い印象だった。食に関する本も多かったな。
今日買ったのは以下の2冊。
浪川寛治『俳諧 蕎麦ばなしーーそばの俳句でそばを読む』(グラフ社)
土居健郎『「甘え」の構造』(弘文堂)
『「甘え」の構造』は前から興味があった本だったのでこれを機に購入。蕎麦のほうは全く知らない本だったけど、蕎麦と俳句という取り合わせに心惹かれて購入。
『俳諧 蕎麦ばなし』を少しだけ読んで、「あ、今は新そばの季節ね」と気がついた。たまたま手にとった本が今の季節によく似合う本だと嬉しい。これを読み終えたら、また新しい蕎麦屋の開拓に行こう。