煉獄日記

目指せ天国。

カリフォルニア日系移民と相撲

もうすぐ七月場所(名古屋場所)が始まるよ、ハッピー!と思いつついろいろ相撲の歴史を調べていたところ、なかなか興味深い記事を見つけたので紹介したいと思う。ちなみに日本語の引用はすべて拙訳です。

 

"Japanese American Sumo in the Continental United States, 1900-1941 (Part 1 and 2)"

「アメリカ本土における日系アメリカ人の相撲文化(1900-1941)」

 日系一世たちが渡米した明治・大正期には、「日本の農村部で相撲はスポーツではなかった。それはむしろ、その年の豊作を神に感謝するために行われる民衆によるひとつの神道の儀式であった( In rural Japan sumo was not a sport; rather, it was a folk Shinto ritual in which gods were thanked for the year’s good harvest.)」。アメリカへの移住が始まった初期にはそのような儀式的側面が強かったが、その後相撲はそのエキゾチックな雰囲気から日系移民たちが「日本人らしさ」を主張するためのアイデンティティの拠りどころとなっていく。

 一世から二世へと時代がうつると、「相撲がアメリカ生まれの子どもたちに精神的、身体的強さ、そしていわゆる大和魂を身につけさせるために役立つ(sumo helped their American-born children to acquire mental toughness and physical strength, along with a particular Japanese spirit.)」と考えた一世たちによっていくつかの相撲協会の設立される。二世たちにとって裸をさらさなければいけない相撲はあまり気の進まないスポーツではあったが、帰米(米国で生まれ日本で教育を受けた二世)たちは割と積極的に参加していた。これらの団体は日本の相撲協会とも交流があり、日本へ「相撲留学」した力士たちもいた。

 太平洋戦争勃発後は相撲文化を牽引してきた人々がFBIに逮捕されたこともあり、相撲文化は下火となる。強制収容所内で相撲大会開催などを試みるも、結局戦後の日系人差別が長引く状況の中、日系移民社会における相撲文化はほとんど忘れ去られてしまった。

 

結構長い記事だったのでかなり大雑把な要約になってしまった。もっと細部の面白い記事なので、ぜひ皆さん元の記事を読んでみてください。(英語だけど)

いちばん気に入ったエピソードは、農民たちは日系社会でも下層に見られていたけど、日々肉体労働をしているから相撲をするとやっぱり強くて、相撲を通してなら彼らはスターになることができたっていうお話。昭和の名力士の中には、千代の富士のように漁師の家の出身という人もいるし、相撲はそういう「シンデレラストーリー」が生まれやすい競技なのかしら。

あと、相撲の儀式性や教育的側面という話が出ていたけれど、そういえば昔は父と息子が「相撲取るぞ!」なんて場面もよくあったというし、子どもの成長具合を親が知るための交流手段として相撲は重要な「遊び」だったんですね。

 

海外出身の力士が増える中、こうやって日本からアメリカに相撲文化を運んで行った人たちの話を知るのも悪くないですね。結局アメリカでは相撲はほぼ途絶えてしまったようだけど、辛い辛い移民としての生活の支えとなった「アメリカナイズされた」相撲はやはり覚えておくに値する独自の文化なのではないかな、と思います。